第33回:対談「東芝の情報システムマネジメント」(3)~IS子会社の今後を語る
掲載日 : 2008年7月14日
ゲスト : 前 東芝ISセンター長 兼
東芝インフォメーションシステムズ代表取締役社長
小柳 順一 氏
ゲスト : 現 東芝インフォメーションシステムズ代表取締役社長
六串 正昭 氏
インタビュアー : 株式会社スクウェイブ代表取締役社長
黒須 豊
株式会社東芝は、2002年にIS部門を統合・分社し、東芝インフォメーションシステムズ株式会社(以下 TSIS)を設立しました。今回は、前・東芝ISセンター長兼TSIS代表取締役社長の小柳順一氏と現・TSIS代表取締役社長の六串正昭氏に、今後のTSISについてお話しいただきます。
黒須:前回までのお話で、組織の足腰を強化する上で、いかに“人”を大切にしてきたかが分かりました。
小柳氏:「IS子会社の財産は人。これはずっと変わらないと思いますよ。」
六串氏:「私もモラールアップのために『東芝のビジネス(現場)の臨場感や当事者意識を共有しよう』と言い続けています。IS子会社も現場の動きに敏感でなくてはいけませんからね。そして、IS子会社としての誇りを持つために自分たちにしかできないことをするのも大事ですね。例えば、ITを使いこなすレベルの向上やIT資産の有効活用とTCO削減、またITでビジネスリスクを軽減する、つまり安全・安心と利便性の二律背反を追求することも可能だと思います。さらにグループ会社へ教育や資格認定制度を公開し、人事交流も盛んに進めています。この4月からは、社員同士が感謝の気持ちを伝え、お互いを認め合う文化を作ろうと『ありがとう運動』を始めました。目的は連帯感や一体感の醸成で、組織力強化策の1つです。始めはIT化してメッセージをと考えましたが、やはり基本は手渡しということで、部門ごとに色分けしたデザインカードを準備し、全社員携行して都度発行しています。」
小柳氏:「いい運動ですよね。私は叱咤激励でした(笑)。」
六串氏:「頭を悩ます人材面では、“ベテラン選手”の活用に力を入れたいと思っています。アプリケーションを作るにも開発するにも、大きなプロジェクトでは、ベテラン選手の目利きや勘所が効いてくるでしょう。ベテラン選手をうまく配置しながら、私たちが作ったベースに補完していくことが大事ですね。」
黒須:なるほど。長い経験と知見を活かしてもらおうということですね。
六串氏:「はい。また、就業環境の都合などでリタイアした人、特に女性の活用も視野に入れています。勤務形態をフレキシブルにして、在宅勤務もできるといいですね。」
小柳氏:「在宅勤務は仕組みづくりが大変ですが、だからこそやる価値があります。“できるといいですね”ではなく、実現を期待します(笑)。」
六串氏:「そうですね。まずはトライアルです。4月にベテラン選手やリタイアした人たちの活用を主な目的として、TSISの100%子会社『東芝アイエス・コンサルティング株式会社』を設立しました。IT人材はこれからますます不足しますから、海外の人材活用も含め、いくつも間口を持っていないといけません。」
黒須:では、今後の課題は何ですか?
六串氏:「永遠の課題になると思いますが『適切なQCDの維持』ですね。例えば、運用品質はITILなどの標準に合わせていても、最後は人間の判断に依存せざるを得ません。現場の人間が楽になり、品質が安定するのが理想ですが、そのためにはどうすべきなのか。あとでビジネスにインパクトを与える被害が起きてしまうことに比べれば、再発防止は当然ながら、むしろ運用品質の向上のために、予防保全や人材育成に投資すべきだと思います。そこで現在、品質レスキュー隊のような運用システムの安定化を進めるチームを派遣して、組織横断的にグループISの運用品質を向上させる取り組みも行っています。」
黒須:次々と新しい動きが出ていますね。
小柳氏:「リーダーの交代はマネージメントの色を変えるということ。過去に捉われず、六串カラーを堂々と前面に出し、TSISをさらに盛り上げていってくれると信じています。」
黒須:最後に、六串さんの今後の方針をお願いします。
六串氏:「小柳さんの半ば強引に引っ張っていく(笑)強いリーダーシップはマストだと思いますし、初代代表取締役社長として適任だったと思います。TSISも6年目になり、私は、ターニングポイントに来ていると自分自身に言い聞かせ、『TSIS2.0』を宣言して活動を開始しました。小柳さんの社員を大切にする方針、具体的目標値を設定しチャレンジ&レスポンスするスタイルは継承して、私自身のこれまでの現場経験を活かしながら、TSISをより良い会社、より魅力ある会社にしていきたいですね。我々の最大のミッションは『東芝および東芝グループのビジネスにITとしてどう貢献するか』ということです。東芝は今10兆円規模企業を目指していますから、そのコンペティターと伍して戦えるITインフラを準備・提供するのが命題です。