第50回:本当に必要なものを考える
掲載日:2015年9月25日
執筆者:株式会社スクウェイブ
マーケティング部長 CSディレクター
中島 由香里
9月20日から26日は動物愛護週間ということで、犬や猫のペット(コンパニオンアニマル:伴侶動物)を取り巻く環境について改めて考えてみた。
我が国において、犬や猫のペットの数が15歳未満の子供の人口数を超えてから随分経ち、今やペット関連ビジネスの市場規模は1兆4,000億円を超える(矢野経済研究所推計)と言われている。
そのペット関連ビジネスのサービス内容は、ペットフード、健康・医療・保険、介護・ケアサービス、美容、ペットシッター、ペットホテル、しつけ教室・保育園、生活・ケア用品、霊園・葬祭に至るまで、驚くほど多種多様であり、今や我々人間向けのサービスとあまり変わらないのではないかと思ってしまうほどである。
中でも驚いたのは、ペット用の酸素カプセルである。その効果は、人間同様に疲労回復、体質改善、運動不足やストレスの解消、リハビリ・怪我の回復、美しい毛並、etc.とのことで、動物病院で使用されているだけでなく、リラクゼーションやアンチエイジングのためにも利用されているというのだから驚きである。
また、ペットフードを例にとってみても、ドライ・セミモイスト・ソフトドライ・ウェット、ライフステージ別(成長期用、成犬・成猫期用、妊娠・授乳期用、高齢期用)、犬種・猫種別、体質・目的別(肥満対策、アレルギー対応、胃腸が敏感、食欲にムラがある、健康で美しい皮膚・被毛を保つ、歯垢・歯石が気になるなど)など、食に対する安心・安全に加え、健康管理や美容についてまで考えられた商品が多数存在する。
このように提供されるサービスが増え、市場規模が拡大している一方、これらを利用するペット/コンパニオンアニマルの飼い主の意識や行動はどうであろうか?
飼い主のほとんどは、自身のペット/コンパニオンアニマルを家族だと考え、それゆえ、健康管理やしつけはもちろんのこと、より快適な生活をさせてあげたいと思いながら共に生活していると思う。
ペット/コンパニオンアニマルと共に旅行をしたり、レストランで食事をしたり、ペット用バギーに乗せてお出かけをしたり、着飾ったり等、まるで我が子のように(もしくはそれ以上に?)ペット/コンパニオンアニマルを扱う飼い主と、これまた子供以上にとても良くしつけが行き届いたペット/コンパニオンアニマルを目にすることが増えたように感じる。
しかし、残念なことに、中には飼い主としての責任を果たしていない人も存在するように思う。そのような飼い主はごく一部の人であると思うが、そのような人が存在すること自体が非常に残念である。
飼い主の責任の中でも重要なことの1つに「しつけ」があると考える。ペット/コンパニオンアニマルと共に安心して快適な生活を送るために(他人に迷惑を掛けないために)、飼い主は人間社会で生活するためのルールを教えなければならない。人間同様、ペット/コンパニオンアニマルも家庭での「しつけ」は、社会の一員として、またペット/コンパニオンアニマルの身を守る上でも非常に重要であり、必須であり、飼い主の義務であると思う。
トイレのしつけは元より、犬であれば、無駄吠え・飛び掛かり・噛み付きをしてはいけないこと、また、例えば「待て」「おいで」等の指示を聞いた時の行動を教えることにより、ペット/コンパニオンアニマルが危険なものを口にするのを防いだり、危険な状態を回避したり、不測の事故に巻き込まれることを防ぐことができる。
市場規模が1兆4,000億円を超え、さまざまなサービスが展開されているペット関連業界、しつけの仕方が分からない飼い主や自身のペット/コンパニオンアニマルをきちんとしつけていない飼い主の助けとなるようなサービスを今後更に増やして欲しい。
ペット/コンパニオンアニマルを着飾ることを否定はしないが、本来、それは重要でも必須なことでもない。飼い主の中には重要・必須だと思っている人もいるかもしれないが、他人に迷惑を掛けない・社会の一員として安心して生活を送るといった面においては、着飾るということは、「あったらよい」という欲求レベルのものだと思う。
一方、「しつけ」は間違いなく必須である。無くてはならないものである。もし、「(しつけをし)なかったら」人間社会で共に生活する上で支障を来すと言っても過言ではないだろう。
この動物愛護週間に、飼い主はペット/コンパニオンアニマルと共に生活する上で本当に“必要な物・事”と“あったら嬉しい物・事”を今一度考えて見てはどうだろうか。
ここまでペット/コンパニオンアニマルに関して個人的な見解を述べてきたが、“必要な物・事”と“あったら嬉しい物・事”については、情報システムも同じように考えることができるのではないだろうか。安全・安心の為、トレンドだから等々の理由で、「(今は必要ないけど)今後必要になるかもしれない」、「あれば(その機能を)使う」など、本当に必須かどうか不明なままの情報システムを開発/維持していないだろうか。今一度自社のシステムについて、見直していただければと思う。