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第70回:「どこより早い令和6年春期セキスペの分析」
~午前2試験から読み解く情報セキュリティの最新トレンド~

第70回:「どこより早い令和6年春期セキスペの分析」
~午前2試験から読み解く情報セキュリティの最新トレンド~

掲載日:2024年5月9日
執筆者:株式会社スクウェイブ
カウンセラー
和田 柊平

先日、情報処理安全確保支援士試験(以下セキスぺ)の令和6年春期試験を受験した。さっそく午前試験について自己採点を行ったところ、午前1試験は30問中26問(合格ラインは18問)、午前2試験は25問中19問(合格ラインは15問)正解していた。午後試験については自信がないものの、次回は午前1試験の受験が免除されることも踏まえれば、最低限の結果は残すことができたのではないかと感じている。

 ところで、古くから「鉄は熱いうちに打て」という。そこで、令和6年春期試験の午前2試験の問題を参照し、今回問われた新論点を抽出することにより、情報セキュリティに関する最新トレンドについて(おそらくどこより早く!)分析したい。本記事が企業のセキュリティ担当者だけでなく、将来のセキスペ受験者にとって有益なものとなることを願ってやまない。

 まず、午前2試験の第7問では、「ISMAP-LIU」が問われた。「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(Information system Security Management and Assessment Program:ISMAP)」とは、政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスを予め評価・登録し、政府機関が情報システムを構築する際には原則的にはISMAPに登録されているものから選択することで、クラウドサービスの円滑な導入に資することを目的とする制度である。このISMAP自体は2020年から運用が開始されていたが、ISMAPの枠組みのうち機密性の観点から重要度の低い情報のみを扱うサービスに用いるSaaSのみを対象としたものが「ISMAP-LIU」であり、2022年9月に運用が開始された。

 また、第8問では、「SIM3」が問われた。近年ではCSIRTを設置する企業が増加しており、これ自体は情報セキュリティの観点からは望ましい傾向であるといえる。しかし、CSIRTが形骸化しているケースも多々あり、これではいくらわざわざ組織を設置したとしても意味がない。そうした背景から、組織・人材・ツール・プロセスの4つの観点からCSIRTの成熟度を評価するモデルである「SIM3(Security Incident Management Maturity Model)」に注目が集まっている。その内容にはたとえば、プロセスの観点の中には、社内のメール管理者やWebサーバー管理者との連携を評価する、P-10「E-mailやWeb上のベストプラクティス」という項目などが含まれている。なお、2022年には欧州ネットワーク情報セキュリティ機関(ENISA:The European Union Agency for Cybersecurity)がSIM3をベースにCSIRTの成熟度を測るフレームワークを改訂している。

 さらに、第17問では、「SBOM」が問われた。この「SBOM」とはSoftware Bill of Materials の略であり、パッケージソフトウェアやデジタル機器向けの組み込みソフトウェアを構成するコンポーネント及び、コンポーネント間の関係性を一覧化したソフトウェア管理手法のことである。このSBOMの導入の背景には、2020年頃から米国企業や米国政府がソフトウェアに仕掛けられたバックドアによって相次いでサイバー攻撃被害を受けたことから、ソフトウェアサプライチェーンの管理が重視されるようになったことが挙げられる。このSBOMは、脆弱性管理やライセンス管理を効率化できる手段としても注目を集めており、日経コンピュータ2024年4月18日号では特集を組まれている。

 最後に、第25問では内部統制について出題されたが、ここでも問題文には「“財務報告にかかる内部統制の評価及び監査に関する実施基準(令和5年)”」と記載されていた。午前1試験の第21問でも、「システム監査基準(令和5年)」との記載がある。気付きにくいかもしれないが、昨年の改訂が問題文中に反映されていたのである。

 わずか25問の午前2試験において「ISMAP-LIU」、「SIM3」、「SBOM」、「“財務報告にかかる内部統制の評価及び監査に関する実施基準(令和5年)”」と4つの新論点が出題されたことは注目に値する。それだけ、近年のITや情報セキュリティを取り巻く環境の変化が激しいということを示唆しているようにも思える。ちなみに、同日行われた応用情報技術者試験の午後問題では、「ゼロトラスト」が出題されていたことがX(旧Twitter)で話題になっていた。投稿を見る限り、この問題の正答率は高くなかったようである。それだけに、最新のIT動向やセキュリティ動向に注視し続けることが必要なのである。

 なお、当社では昨年改訂され新しくなったシステム監査基準や統一基準群について熟知した監査人によるシステム監査を実施している。また、当社のコアコンピタンスがITに関連するベンチマークであることもあり、CSIRTの成熟度や情報セキュリティインシデント対応についても評価し改善に向けた提言を提供できる。さらに、当社ではクロスワードパズルを用いた教育ツール「Cyber Cross」を展開しているが、サンプルとして、例えば「セキュリティ用語」や「ITパスポート対策 ストラテジ系」編などを提供している。いずれのツールやソリューションについても、関心のある方は官民問わず、お気軽にお声がけいただきたい。

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